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家庭向け電力小売自由化を考える

2016年4月の家庭向け電力小売自由化スタートを前に、年末年始を挟んで各社から料金プランが発表されました。特に新電力の中でも有力視される東京ガスが12月24日に料金プランを発表。おそらくその出方を伺っていた他社も年明けに相次いで発表し、守る東京電力からも1月7日に新プランのリリースが出ています。電力自由化の詳細は各サイトでたくさん記事がありますのでそちらをご覧いただくとして、今回は我が家の自由化に備えた検討のプロセスを掲載しておきたいと思います。


各社プランの特徴を見る

まずはすでに発表されている各社のプランと、東京電力の既存標準プランを比較しておきたいと思います。一番左が現在我が家が契約している東京電力の従量電灯C、そして東京電力の新プラン3種と、新電力4社のプランです。

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※料金は各段階1kWhあたりの単価。但し東京電力のプレミアムプランは第一段階定額制。基本料は60A以上で契約した際の10Aあたりの単価。但しS と記されている欄はスマート契約で、1年間の30分あたり最大消費量から算出される、1kWhあたりの単価。


皆さんご承知のとおり、現在の電気代は3段階制になっていて、段階が上がると単価も上がる仕組みになっています。世の中の法則では、使えば使うほど単価は下がるということになりますが、家庭向けの電気だけは例外。ガスは逆に段階が上がれば単価が安くなるんですけどね…これはライフラインとして国民の最低限の生活を保証するという観点からとされています。新電力各社ともこの最低ラインのユーザーを積極的に取りに行くことはなく、最も利益の出る、つまり年間を通じて第3段階まで達する程度電力消費の多いユーザーがターゲットとなっています。東電のHPにも記載のとおり、年間を通じて300kWh/月に満たないようなユーザーはあえてプランを変えたり、他社に乗り換えるメリットはあまり無いようです。

それでは各プランの特徴を簡単にまとめておきましょう。

<東京電力・スタンダードL/Xプラン>
これは現在の従量電灯契約のほぼ同条件と言えるプランになりますが、新プランではTポイントまたはPontsが使用料の0.5%付与されます。しかし従来プランに比べ、ポイント還元率以上に値上げされているところが東電の強かなところ… Lプランは従来通り最大電流によって基本料が決まるプラン、Xプランはスマート契約と言って、1年間を通じて最も電力消費量の高かった30分を基に基本料が決まるプランです。最近はIHコンロやホームエレベーター、エアコンなど100Vに比べ半分の電流で済む200Vの電気製品が増えてきていますから、Xプランはちょっと不利なような気もしますが、使い方次第では有効かもしれません。

<東京電力・プレミアムプラン>
このプランは今回東京電力が発表したプランで最も力の入ったプランです。基本料は前述のプランXと同じくスマート契約(但し単価が94円も安い)、そして月400kWhまでは9,700円の定額、400kWh以降も既存プランに比べ0.9円ほど割安となっています。東電ではこのプランに限り2年契約を条件に12,000相当のポイント進呈など別格の優遇策を用意。つまりこのプランでお得になるユーザー層が、まさに電力自由化にともなって他社が虎視眈々と狙っている格好の草刈り場というわけです。後で比較のグラフも出てきますが、よく考えられたプランだと思います。

<JCOM>
我が家はJCOMのケーブルテレビを利用していますので、セットでお得になるなら有力な選択肢と思っていました。ところが…いざ発表されたプランを見てガッカリ。基本料は東電と同額、単価が第一段階0.5%、第2段階1%、第3段階10%とそれぞれ割安になっています。このプランを見てまず感じたのは、独自に○○円という料金設定をせず、同時期の東電のプランから○%引きという契約になっていること。確かに分かりやすいといえば分かりやすいかもしれませんが、第3段階の10%引きという数字を誇張したいがためではないかと…
結局トータルで見ると大して割安にもならず…まぁこの会社、最近サービス品質最悪で、とてもこんなところに電気などという重要ライフラインを任せる気にもならないのでいいのですが。

<東京ガス>
新電力最有力とも目された東京ガス。都区部であればほとんどの家庭がガス契約を持っているでしょうから、セットプランによる割引も期待されたところでした。しかしこちらも蓋を開けてみればあまりお得感もなく…。インターネットなどと組み合わせれば多少マシになりますが、あえて積極的に選ぶことにはならなそうです。

<東燃ゼネラル>
かつてのモービル石油、エッソ石油、東燃、ゼネラル石油の4社をルーツとするエネルギー企業の老舗。他社と異なるのは、契約電流によって基本料金、従量料金の単価が変わること。我が家のように12kvAという高電流で契約しているユーザーには大変ありがたいです。自社で発電から販売まで手掛けることになりますが、他社と比べポイントや特典提携はありません。その分価格で勝負といった感があります。

<ENEOS(Jxエネルギー)>
こちらが今回の大本命。基本料金や段階制は東電の従来プラント変わらないものの、第二・三段階の従量単価は割安感一番です。特に第三段階の単価は25.75円と、東電に比べ4.17円も低い設定になっています。JXエネルギーはENEOSブランドで給油スタンドを展開する、オイル系のエネルギー企業ですが、企業向けには10年以上の電力供給実績があります。また、自社発行のクレジットカード、ENEOSカードとの提携によりスタンドでのガソリン給油が割引になったり、TポイントやANAカード、VIEWカードとも提携を決め、価格そのものの競争力に加え、特典面でも優位に立ちます。また今後auとの提携も発表されています。


使用料別お得ラインはどこか?

各社の料金プランを使用量と比例させた表が以下のとおりです。我が家の12kvA契約を前提に基本料を含めた合計額で比較しています。スマート契約の基本料については5kWhで計算。あまり大きな差がないためちょっと見づらいですが、各社がどのあたりの層を狙いに行っているのかという特徴はわかると思います。

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まず、360kWhまでの比較的低消費のユーザーは東燃ゼネラル。但しこれは我が家の12kvA契約を前提にしていますので、50A以下の契約の場合だとJCOMやENEOSあたりも選択肢に入ってきます。

そして草刈り場となる400~500kWhの層は東電のプレミアムプラン。グラフも見ての通り、狙っているユーザー層が非常にはっきりしています。この層のユーザーは他社に渡さない!という東電の強い意気込みが感じられます(笑)
このプランはスマート契約で、表では基本料単価の算出基準を5kWhで計算していますから、ウチはそんなに使わないよ! ということであれば1kWhあたり468円、年間で5,616円基本料が削減できます。

さらに上、600kWh以上の層はENEOSの圧勝。第三段階25.75円の単価が効いて、使えば使うほど差が開いていきます。


我が家の実態に当てはめると…

これまでの結果を踏まえ、過去2年間の我が家の電気使用状況に当てはめて、どの会社と契約するのが一番お得なのか考えて見ます。上段が2014年、下段が2015年の月別使用実績です。ここでは基本料と使用料のみ計算し、税金、その他の配賦金は考慮していません。

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年間での最安はENEOSという結果になりました。現在我が家は電化厨房割引の適用対象のため、この分を考慮すると約4.4%、0.5%のポイント還元を加えると約5%ほどの費用削減効果があります。一方、月別に見ていくと、5・6・9~11月の空調不使用期間は基本料の安い東燃ゼネラル、3・4・7・8月のショルダー期間は東電のプレミアムプランが最安であることがわかります。しかし、プレミアムプランを選択した場合、空調不使用期間の5か月は400kWh未満の使用量にとどまるため、定額料金分を使い切ることができていません。結果として年間で見るとENEOSに対し3,000円程度の差をつけられてしまっています。しかし、今回の比較ではプレミアムプランのスマート契約基準を5kWhとかなり余裕を持った条件で適用しています。つまり、契約基準を1kWhでも下げられれば、年間で見ても東燃やENEOSと逆転することになるわけです。


とりあえず結論

ということで、各社のプランを検討すると我が家の場合「難しいこと考えたくなければENEOS」の一択になります。しかし、東電のプレミアムプランはスマート契約という新しい基準で、我が家の条件でどれだけメリットを見いだせるかという若干挑戦要素はあるものの、うまく運用できればENEOSを上回る削減効果が期待できます。試しに年間で最も電気を使用するであろう1月の夕方、食事の準備をしている時間帯の60分をサンプルで測定したところ、おおよそ2.5~3kWhという結果になりました。この中には暖房、IHクッキングヒーター、電子レンジ、炊飯器、プラズマテレビなど、我が家の中でも特に電気食いな機器が稼働しています。ここにホームエレベーターを2往復程度加えたとしても、5kWhにはならないのではないかというのが結論です。また、このプランは4月からスタートするため、2016年内は4月=>7月=>8月=>12月という順で契約基準が上昇していき、2017年以降は毎年1月の契約基準が継続していくものと見込めます。

また、空調を使用しない期間については、食洗機や洗濯乾燥機を積極的に使うことで、水道料を削減したり、梅雨時の洗濯効率を上げたりすることも期待できます。

ということで、我が家の結論としてはまず東電のプレミアムプランを選択し、キャンペーンの12,000ポイントを頂いたうえで年内を運用、2017年1月の契約基準が5kWhを上回るようであればENEOSへ乗り換える、ということになりました。この際プレミアムプラン2年契約の解約料5,000円が必要になりますが、キャンペーンで手にしたポイントを充当すればリスクはありません。結局東電に落ち着くというちょっと面白くない結果ですが、まずはこれで電力自由化1年目を迎えたいと思います。

※2/13追記
東京ガスが料金プランの値下げを発表しましたので、シミュレーションを見直しました

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